Paris Kyoto RESEARCH WORKSHOP

M1 伊藤克敏


都市の中の自然/自然の中の都市

- la nature dans la ville/la ville dans la nature -


このワークショップは京都大学の建築学系研究室と土木系研究室の二つの研究室が現地パリにてパリのラ・ヴィレットにある建築大学ENSAPLVと共同で行ったワークショップであり、京都大学建築学の田路貴浩准教授によって決定したテーマ「都市の中の自然/自然の中の都市」に対するリサーチ形式のワークショップとなりました。

具体的には、京都における自然について事前に調査を進め、パリでの実測調査や観測などを経てその理解を深めるとともに京都とパリの自然に対する考え方の相違や共通点などを探ってゆくものでした。

このワークショップの中で私はフランス人の学生から興味深い言葉を聞くことができました。自然に対して「building nature」という表現を使っていました。

われわれ日本人の感覚からすると自然に対して使う表現ではないと感じたのですが、現にパリの公園、広場において自然が建築と同じようにbuildされていることが分かり、なるほどと納得させられました。

個人的な経験ですがこういった発見が多くみられたワークショップとなりました。

RESEARCH WORKSHOP ポスター


導入【ワークショップ1日目】

 

京都大学大学院・田路研究室と川崎研究室の学生が二人ペアになって京都市から敷地を一つ選択し、「都市の中の自然」をテーマに調査を進めました。

パリでのワークショップ初日、京都大学の学生が各々の調査した敷地についてプレゼンテーションを行いました。これに対してラ・ヴィレットの学生は同一テーマについてグループごとに「トピック」を設定してリサーチを進め、ワークショップ初日同様にプレゼンテーションを行いました。

その後、互いのプレゼンで関心を持ちあったグループ同士、京都大学組とラ・ヴィレット組で新たにチームを作り、グループワークをスタートさせました。

また、京都大学田路研究室に在籍しているTyana Santiniさんに本ワークショップのテーマに即して、「京都の疎水」に関するレクチャーを行っていただきました。


初日の学生プレゼンテーションの様子(左)と、Tyana Santiniさんによるレクチャーの様子(右)

 

パリ市内の歩行調査【ワークショップ2,3日目】

 

ラ・ヴィレットの学生が前もってリサーチしてきたトピックは「Animal」「オスマン計画」「農業」などがあり、京都大学学生がリサーチした敷地は「円山公園」「桂離宮」「鴨川」「六角町」「梅小路公園」などでした。

我々のペア(伊藤(=執筆者)と高橋)は京都の敷地は「円山公園」とし、京都大学の「京都六角町」を敷地とした川上・長澤とともに「オスマン計画」をトピックとしたNoémiとDenisのグループとともにスペシャルゲストである建築家のFabianさんも加えてグループワークを開始しました。

我々のグループはまずパリ市内の都市の中の自然を発見するべくオスマン計画の歴史、軌跡をたどりつつ街歩きをスタートさせました。この歩行調査は1日半かけ、チュイルリー庭園やButtesChaumont公園などをはじめオスマンによるパリ大改造計画によって生まれた中庭や広場、運河など延べ29か所にものぼる地を訪れました。

他のグループも同様に街歩き、敷地探しなどから開始し、各々のトピックに沿いながら調査対象を見出いしていきました。動物をトピックとして都市の中の生き物を対象に調査していたグループは梅小路公園を敷地としていたグループと組みパリ市内を散策し、生き物という視点から自然についてリサーチを進めていました。

三日目のリサーチ終了後、我々のグループのFabianさんに京都市の北部山間にて進行中のリノベーションプロジェクトについて特別プレゼンテーションを行っていただきました。


パリ市内における歩行調査の様子(左はマレ地区トレゾール通り、右はルーブル美術館)

研究のアウトプット【ワークショップ4日目】

 

3日目も終わり、我々のグループは二日間で訪れた29か所の敷地に対してグループワークの成果をどういった形で最終プレゼンテーションとして示すか議論を重ねました。残り二日という短い時間でできることを考え、二日間のリサーチで得た経験、知識、感覚などを共有しつつ、プレゼンテーションの形式も決定するということはこれまでの中でも困難を極めていました。

我々のグループは同じ敷地を同じように歩きながらも関心を持ったこと、感じたことなどが全く異なっていたり共通点が見いだせたりしたことに着眼点を当て、各々の敷地やその周辺に対していうこと抱いたイメージを簡単なスケッチ、ドローイングという形で描き、表のようにまとめるという手法をとりました。

この方法で、互いの「都市の中の自然」というものの感じ方を共有し、議論を可視化し、それをそのままプレゼンテーションに利用することとしました。

また、表としてまとめたものをもとにした分析と議論の末、〈Buttes Chaumont公園〉を新たなリサーチ対象と定めて、最終プレゼンテーションの準備を行いました。


実際に我々のグループが最終プレゼンテーションに利用したドローイング(左)と、私のグループメンバー

最終プレゼンテーション【ワークショップ5日目】

 

5日目の最終プレゼンテーションでは5日間行ってきたリサーチをパワーポイントと印刷物やドローイングなどの展示によって発表しました。最終的に対象とした敷地に対して実測に基づく断面図を描いたり京都での調査と比較しながら見出した共通項や特異点などをまとめたり絵に描いたものなどを展示し発表していました。

我々のグループでは29か所について7人が1イメージずつ描いた合計203枚のスケッチの表を中心としてグループワークの中での我々の思考回路とその過程を可視化することをポイントとしてプレゼンテーションを行いました。

最終プレゼンの様子(左上)、最終展示の様子(右上)、

参加メンバー集合写真(下)



M1 伊藤 克敏

 

1995年大阪生まれ。京都大学建築学科で卒業設計をやった後、現在は京都大学大学院田路研究室に所属(2018年)し、その夏から1年間パリのラ・ヴィレットへと留学している。

 

漠然とものをつくるのが好き、というスタートから現在は建築を学んでおり、建築と直接関係ないことでも深く考えられることや面白いと思えるものなら何でも好き。

映画や街歩きが好きで一見無関係と思われたものがつながったり(伏線)無意味だと思われるものに意味を見つけたりするのが好き。

留学中いろんなものに触れいろんな人に出会い、世の中をより多角的に考えられるようになることに期待。